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陽イオン定性分析① ~溶解度,沈殿と溶解,王水,水銀(Ⅰ)イオン~

投稿日:5月 1, 2020 更新日:

こんにちは、transです。

今回は、陽イオン定性分析において大切な、溶解度,沈殿と溶解,王水,水銀(Ⅰ)イオン、の4つのキーワードについて解説していきます。

実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。

レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。

それでは行きましょう!

1、溶解度

妖怪の画像

こっちの妖怪じゃないですね(笑)

溶解度とは、一定量の液体(溶媒)に個体(溶質)が溶けることのできる最大量のことです。基本的は、溶質の溶解度は100g中の溶媒に溶けることができる量で表されます。中学校で習ったと思いますが温度が高いほど溶解度は上がります。下の図みたいなものを見たことがあると思います。また、常識的に分かると思いますが、同じ温度であれば溶媒の量が多い方が、溶質を多く溶かすことができます。

溶解度の図

重要なのはここからです。溶解度の何が陽イオン定性分析に関係しているかということですよね。ここで重要になってくるのは塩化物イオンで沈殿した塩化銀 AgCl,塩化鉛 PbCl2,塩化水銀(Ⅰ) Hg2Cl2を更に分けるときに、熱湯を加える過程があります。このときに、溶解度が高いPbCl2だけが溶けて、ろ液として得ることができます。ちなみに溶解度(20℃)は、AgCl:0.0001923,PbCl2:1,Hg2Cl2:0.0003246となります(1)

また、この過程でお湯を複数回入れる理由も溶解度から分かります。

例えば、「熱湯2mLを0.5mLずつ4回に分けて注ぐ」という手順があるとします。なぜ、2mL一気に注がないのでしょうか?理由は溶解度です。先ほども述べましたが、同じ温度であれば溶媒の量が多い方が、溶質を多く溶かすことができます。つまり、2mL一気に注ぐとより固体(沈殿)が溶けやすくなります。つまり、0.5mLずつ注ぐことによって、PbCl2以外の物質が溶け出てしまうのを防ぐ役割があります。さらに、複数回注ぐことによって1回では溶かしきれなかったPbCl2の残りを溶かし出すことができます。

以上が溶解度と陽イオン定性分析の関係性になります。

 

この章のまとめです。

溶解度の大きいPbCl2のみが熱湯によって溶ける

熱湯は少量で複数回注ぐことで溶解度の高い物質のみを確実に溶解させることができる

 

2、沈殿と溶解

沈殿の画像

沈殿と溶解についてです。沈殿とは溶解できなかった固体、溶解とは固体が溶媒に溶けて溶液となったものです。

陽イオン定性分析において重要なことは、金属イオンが沈殿ではないということです。つまり、化学反応式をみて金属イオンが右側にある式は溶解した式、左側にある式は沈殿した式ということになります。もちろん、錯イオンも例外ではないです。

以上が陽イオン定性分析と沈殿,溶解の関係性になります。

 

この章のまとめです。

化学反応式をみて金属イオンが右側にある式は溶解した式

化学反応式をみて金属イオンが左側にある式は沈殿した式

 

3、王水

王冠の絵

王水についてです。王水とは、濃硝酸と濃塩酸の体積比が1:3となるように混合した物質で、全ての金属を溶かすことができる物質です。王様のような威力から王水と名前が付いたと予想できます。「一升瓶3円(1硝ビン3塩)」などで覚えるといいと思います。

陽イオン定性分析で重要なのは、王水にしか溶けない物質の定性をすることができることです。また、王水にしか溶けない金属はPtとAuくらいなので、ほぼ使いませんが大学生レベルであれば覚えておいた方がいいと思います。

以上が陽イオン定性分析と王水の関係性になります。

 

この章のまとめです。

王水にしか溶けない物質の定性が可能

 

4、水銀(Ⅰ)イオン

水銀の波紋

水銀(Ⅰ)イオンについてです。ここでは、キーワードと陽イオン定性分析の関係性ではなく、水銀(Ⅰ)イオンが、なぜ、HgではなくHg22+と表すのかについて説明します。水銀(Ⅰ)イオンも陽イオン定性分析において大切な物質であるので、しっかりと抑えておいてください。

まず、Hgの最外殻電子配置は、「 (5d)10 (6s)2 」となります。すなわち、Hgの最外殻電子配置は、「 (5d)10 (6s)1 」となります。この電子配置からも分かるように極めて不安定です。なので6sにある電子を、もう1つ取るか、もう1つ補充する必要があります。そこで、HgでいるためにHg同士が共有結合をする事によって電子を補っています。すなわち、Hg2つで1つの水銀(Ⅰ)イオンを形成しているので、HgではなくHg22+と表します。

以上が、HgではなくHg22+と表す理由になります。

 

この章のまとめです。

Hgは共有結合をするためHg22+と表す

 

5、まとめ & 参考文献

いかがでしたか?

今回は、陽イオン定性分析のキーワードとして、溶解度,沈殿と溶解,王水,水銀(Ⅰ)イオンについて説明しました。

 

今回の内容を全てまとめると以下のようになります。

溶解度の大きいPbCl2のみが熱湯によって溶ける

熱湯は少量で複数回注ぐことで溶解度の高い物質のみを確実に溶解させることができる

化学反応式をみて金属イオンが右側にある式は溶解した式

化学反応式をみて金属イオンが左側にある式は沈殿した式

王水にしか溶けない物質の定性が可能

Hgは共有結合をするためHg22+と表す

 

また、参考文献は以下の通りになります。

1、Khaled Gharib「Solubility hand book」2012、p22,26,32

2、北川進,平尾一之,田中勝久「シュライバーアトキンス 無機化学 上 第4版」東京化学同 人、2008、表紙裏付録資料

3、辰巳敬(他13名)「化学」数研出版、2012、p64,251

 

最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

-理系の教養

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  1. […] 陽イオン定性分析については、陽イオン定性分析① ~溶解度,沈殿と溶解,王水,水銀(Ⅰ)イオン~も合わせて読んでください。 […]

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研究者で、思想家で、ゴルフ愛好家の三刀流大学院生です。高校時代に野球でイップスになり絶望しましたが、ゴルフに出会いました。今は、研究の合間に、バイトとゴルフをやっています。効率の良い豊かな人生を目指しています。化学・自己啓発・ゴルフについて呟きます。

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