こんちにちは、transです。
今回は、陽イオン定性分析において大切な、キップの装置,ろ過とろ液,飽和、の3つのキーワードについて解説していきます。
陽イオン定性分析については、陽イオン定性分析① ~溶解度,沈殿と溶解,王水,水銀(Ⅰ)イオン~も合わせて読んでください。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、キップの装置

こっちのキップではないですね(笑)
オランダの化学者のペストル・キップさんの名前を取っています。
キップの装置とは、固体と液体を反応させて気体を発生させる装置です。ただし、加熱が必要な反応や個体が粉末の場合は使用できません。
続いて、キップの装置の使い方および原理について説明します。

①上記の図の矢印の部分から固体試料を入れてください。

②ガラス管、開閉コック、ゴム栓、今回の図は省略していますがガラス管の先にゴム管を付けます。

③開閉コックを開けて、上記の図の矢印の部分から液体試料を入れます。

④入れる液体試料の目安は、上図を参考にしてください。

⑤開閉コックを閉じて、上記の図の矢印の部分から液体試料を入れます。

⑥上記の図を目安に液体試料を加えてください。上記の図の黒矢印が装置内の圧力を示しています。コックを閉じていれば装置内の気圧が上がるので、下の球の液体試料に上から圧力がかかり、液体試料はこれよりは、上がってきません。

⑦開閉コックを開けると、装置内の圧力が下がり、液体試料が、下の球から上の球に上がってきます。そして、固体試料と反応し、気体を発生させます。

⑧開閉コックを閉じると、⑥と同様の原理で、装置内の圧力が上がり、液体試料が下の球に下がるので反応を止めることができます。開閉コックの開け閉めで状況に応じて必要量の気体を得ることができます。
以上がキップの装置の使い方および原理になります。
では、このキップの装置は具体的にどのように陽イオン定性分析に使われているのでしょうか?
答えは、硫化水素H2Sを吹き込む過程で使います。
固体の硫化鉄(Ⅱ)と液体の希塩酸が反応して硫化水素を発生させますね。
FeS + 2HCl → H2S + FeCl2
ちなみに反応式は上記のようになります。
以上がキップの装置の使い方・原理と陽イオン定性分析との関係性になります。
この章のまとめです。
・キップの装置は気体を発生させる装置
・キップの装置は圧力変化させ気体の発生量をコントロールする
・キップの装置は硫化水素を吹き込む過程で使う
2、ろ過とろ液
ろ過とは固体と液体の混合物を分離する方法で、ろ液とはろ過によって得られた液体部分のことですね。これは、中学生レベルなので復習程度でいいと思います。
陽イオン定性分析においても、沈殿したものと、それ以外に分ける操作に使うのも高校生レベルなので復習程度でいいと思います。
重要なのはろ液にはイオンのみが含まれるということです。逆に沈殿はイオンではなく化合物です。
以上がろ過,ろ液と陽イオン定性分析との関係性になります。
この章のまとめです。
・ろ液にはイオンのみが含まれる
・沈殿はイオンではなく化合物
3、飽和

飽和についてです。飽和とは、これ以上溶けることができない状態のことです。特に、溶液に関して飽和溶液と呼ばれます。
陽イオン定性分析においては、鉛イオンPb2+の確認で、クロム酸カリウムとの反応で、飽和酢酸アンモニウムを入れる手順があり、ここで使います。この手順で飽和酢酸アンモニウムを入れる理由としては、緩衝剤の役割があると考えられます。なぜ、飽和にするかは、できるだけ多くのアンモニウムイオンを使えるようにしたいからだと考えられます。
以上が飽和と陽イオン定性分析との関係性になります。
この章のまとめです。
・飽和酢酸アンモニウムは緩衝剤の役割として用いられる
4、まとめ
いかがでしたか?
今回は、陽イオン定性分析のキーワードとして、キップの装置,ろ過とろ液,飽和について説明しました。
今回の内容を全てまとめると以下のようになります。
・キップの装置は気体を発生させる装置
・キップの装置は圧力変化させ気体の発生量をコントロールする
・キップの装置は硫化水素を吹き込む過程で使う
・ろ液にはイオンのみが含まれる
・沈殿はイオンではなく化合物
・飽和酢酸アンモニウムは緩衝剤の役割として用いられる
また、参考文献は以下の通りになります。
1、増田達男,肆矢浩一,中込真,米山裕「フォトサイエンス化学図録」2012、p 8,12
2、辰巳敬(他13名)「化学」数研出版、2012、p64,178
最後になりますが、参考文献とキップの装置の図以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
