こんにちは、transです。
今回は、アニリンの定性試験およびアゾ染料であるp-フェニルアゾフェノールの合成の実験について紹介します。
まず、アニリンの定性試験の章では、アニリンの物性や定性試験によって得られる結果や知見について紹介します。
また、アゾ染料の章では、アニリンをジアゾ化した後に、ジアゾカップリングを用いてp-フェニルアゾフェノールを合成する方法と反応式について紹介します。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、アニリンの定性試験
アニリンってことで兄の画像にしてみました(笑)。
まず、アニリンの物性について紹介します。まず、アニリンとはアミンの1つです。
アミンとは、アンモニアの1つの水素が炭化水素基に置換された化合物です。
構造式は、R-NH₂ で表されます。
アニリンは、このRがベンゼンになった化合物です。以下の画像のような構造式です。アニリンは代表的な芳香族アミンの代表例です。
その他、物性は以下の通りです。
分子式:C₆H₇N
モル質量:93.13 g/mol
外観の状態:無色の特有のにおいを持つ液体
密度:1.0217 g/mL
融点:ー6.3 ℃
沸点:185 ℃
水に対する溶解度:3.6 g/mL(20 ℃の時)
次に、アニリンの定性試験について紹介します。
①アニリンのpH測定
芳香族アミンは弱い塩基性です。したがって、アニリンを万能pH試験紙によってpHを測定すると弱塩基性(青緑色)を示すことが予想されます。
②アニリンと酸の反応
アニリンの定性試験①で説明しましたが、アニリンは弱塩基性です。したがって、酸と反応させると中和反応によって塩を生じます。たとえば、塩酸とは以下のような反応をしてアニリン塩酸塩を生じます。
③アニリン塩酸塩の遊離
アニリン塩酸塩は、先ほども述べたように弱塩基の塩です。したがって、強塩基と反応させるとアニリンを遊離させることができます。例えば、アニリン塩酸塩を水酸化ナトリウムと反応させると以下のような反応によってアニリンが遊離します。
④アニリンとさらし粉の反応
アニリンの水溶液とさらし粉 CaCl(ClO)・H₂O の水溶液が反応すると紫色を呈色します。この反応はアニリンの検出に、よく用いられます。
⑤アニリンと二クロム酸カリウム
アニリンを硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液 K₂Cr₂O₇ と反応させるとアニリンブラックと呼ばれる黒色沈殿を生じる。このアニリンブラックは顔料は染料に用いられるが、構造など不明な点が多い。
2、アゾ染料
この章ではアゾ染料の代表例であるp-フェニルアゾフェノール(p-ヒドロキシアゾベンゼン)の合成について紹介します。
まず、アゾ染料とはアゾ化合物を利用した染料のことです。
アゾ化合物とは、アゾ基(-N=N-)をもつ化合物で、とくにベンゼン環を持つアゾ化合物のことを芳香族アゾ化合物といいます。アゾ染料は主に芳香族アゾ化合物が利用されています。また、p-フェニルアゾフェノールは芳香族アゾ化合物のひとつです。
まず、p-フェニルアゾフェノールを合成するにはアニリンをジアゾ化した後に、ジアゾカップリングによってアゾ化合物を合成します。
ジアゾ化とは、芳香族アミンが、ジアゾニウム塩(-N⁺三N)なる反応のことです。今回の実験では、以下の反応式のように、アニリンに塩酸と硝酸ナトリウムを加えることによって、塩化ベンゼンジアゾニウムを生成します。
また、ジアゾカップリングとは、ジアゾニウム塩に対して、塩基性のフェノール類を加えてアゾ化合物を生成する反応のことです。今回の実験では、以下の反応式のように、先ほど合成した塩化ベンゼンジアゾニウムにナトリウムフェノキシドを加えるとp-フェニルアゾフェノールを生成します。このp-フェニルアゾフェノールは橙赤色であり、染料に利用されます。
また、ジアゾ化の生成物である塩化ベンゼンジアゾニウムの物性は以下の通りです。
分子式:C₅H₅ClN₂
モル質量:128.56 g/mol
外観の状態:無色の結晶
さらに、ジアゾカップリングの生成物であるp-フェニルアゾフェノールの物性は以下の通りです。
分子式:C₁₂H₁₀N₂O
モル質量:198.22 g/mol
外観の状態:橙色結晶
融点:150~152 ℃
最後に理論収量について説明します。
アニリンからp-フェニルアゾフェノールまでの反応は常に等量で起こるため、アニリンの物質量がp-フェニルアゾフェノールの理論収量になります。つまり、以下のような式で得ることができます。
3、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、アニリンの定性試験とアゾ化合物の合成の実験において、重要であるアニリンとアゾ染料というキーワードについて説明しました。
重要な反応式や生成物の特徴について説明したので、しっかり抑えておきましょう。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、戸嶋直樹,瀬川浩司「理解しやすい化学」文英堂、2012、p 418~421
2、辰巳敬(他13名)「化学」数研出版、2012、p 328~330
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。