こんにちは、trans(トランス)です。
今回は、生命の設計図であるDNAを抽出する実験について紹介します。
まず、生命の設計図の章では、生命を設計する染色体や遺伝子の正体について紹介します。
次に、DNAの章では、DNAの性質や基本情報,またDNAの抽出における試薬の役割について簡単に紹介します。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるように、この記事を書いています。スマホを見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、生命の設計図
生物は、子孫を残すことができる機能を持っています。また、このときに親は自分に似た子を作ります。このようなことを遺伝といいます。この遺伝という現象を引き起こす要素を遺伝子と言います。
遺伝子については、様々な議論がありましたが結果的には化学的な物質によって決まることが分かりました。この遺伝に関与する物質のことを遺伝物質といいます。なので、正直、遺伝子も遺伝物質も、ほぼ同じ意味です。ここでは、統一して遺伝子ということにします。つまり、生命の設計図は遺伝子によって決まるということです。
遺伝子の条件としては、
①細胞内に一定の量が存在すること
②物質的に安定であること
③減数分裂によって半分になること
④子孫に正確に伝わること
⑤遺伝形質を支配すること
⑥ある程度の変異を許していること
など挙げられます。
核を顕微鏡で観察していた時に、これら上記に条件を満たす可能性がある物質が発見されました。この物質は、塩基色素で染まることから染色体と呼ばれました。
さらに、研究が進み核にはリン酸を大量に含む酸性物質の核酸が発見されました。この核酸にはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)の2種類があることが分かりました。さらに、実験が進み、核酸のうち、遺伝に関与するのはDNAであることが分かりました。
ちなみに、染色体はタンパク質と核酸が結合したものであることが分かりました。すなわち、DNAと染色体の関係性としては、DNAが安定化するために染色体という形状をとっているというイメージで良いと思います。
では、次の章でDNAについての化学的な側面を見ていきましょう。
2、DNA
DNAとは、先ほども記載しましたがデオキシリボ核酸のことです。
まず、DNAの構成について説明します。DNAは、糖,リン酸,塩基の3つの成分から構成されています。
特に塩基が重要で、アデニン,グアニン,シトシン,チミンという4種類が存在します。この4種類の組み合わせによって遺伝が決定されます。
また、塩基が糖(デオキシリボース)の1’で結合したものをヌクレオシドといい、リン酸がヌクレオチドの糖の5’で結合したものをヌクレオチドといいます。このヌクレオチドの糖の3’と別のヌクレオチドのリン酸基が連続して結合したものをポリヌクレオチドといい、このポリヌクレオチドが水素結合によって2本対の二重らせん構造を持ったがDNAです。
このような構造を持ったDNAは、太さが10 nmで長さが2 mという大きさを持ちます。
次に、DNAの化学的性質について紹介します。また、「③DNAはアルコールに沈殿する」の項目では、本実験の各試薬の役割についても紹介します。
①DNAは熱によって一本鎖になる
DNAは一本鎖上のポリヌクレオチドが水素結合によって二重らせん構造をとっています。つまり、熱によって水素結合が崩壊すると切れて一本鎖になるということです。基本的には、100 ℃以上の温度で一本鎖になるようです。
②DNAは260 nmで吸収最大値をしめす
DNAは塩基を含んでいるため、紫外線を特異的に吸収し、波長260 nmで吸収最大値を示します。この性質は、DNAの検出などに利用されています。
③DNAはアルコールに沈殿する
DNAは極性が高い分子であります。そのため、極性の高い水に溶解します。しかし、水よりも極性の低いアルコールに対しては溶解せずに、沈殿します。この性質を利用したのが、今回のDNAを抽出する実験です。
しかし、単純にエタノールのようなアルコールを加えただけでは沈殿しにくいです。そのため、クエン酸緩衝液などの緩衝液を加えて核酸の酸性を抑えたり,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などによってリン酸基の負電荷の偏りを均一にし、その後の塩を加えることによって凝縮しやすくするなどの工夫が必要です。
3、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、DNAの抽出の実験について紹介しました。
最後の方に説明したDNAのアルコール沈殿についてのことが、特に重要なのでしっかりと抑えておきましょう。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、田村隆明,村松正寛「基礎分子生物学 第3版」東京化学同人、2007、p 1,26~47
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。