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トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムの合成と青写真の作成

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トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムの合成と青写真の作成

 

こんにちは、trans(トランス)です。

今回は、鉄クギからトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成し、合成したトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムが光によって分解する性質を利用して青写真を作成する実験について解説いたします。

 

まず、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムの章では、鉄クギからトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成するまでの過程や収率の算出方法などを解説いたします。

次に、実験操作の章では、沈殿の洗浄や傾斜法などを解説いたします。

最後に、青写真の章では、青写真が作成できる原理や物質濃度比による色調の違いなどについて解説いたします。

 

実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて、予習の手間が省けるように、この記事を書いています。スマホを見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。

レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことに興味があれば、読んでみてください。

 

それでは行きましょう!

 

1、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウム

トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウム

トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムとは、”K₃[Fe(C₂O₄)₃]”という緑色の結晶です。
トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムは、光を吸収して以下のようにシュウ酸カリウムとシュウ酸鉄(Ⅱ)と二酸化炭素に分解される性質を持ちます。
2K₃[Fe(C₂O₄)₃] → 3K₂C₂O₄ + 2FeC₂O₄ + CO₂
詳細は、「3、青写真」の章で紹介しますが、この性質を利用して青写真を作成することができます。
この章では、その準備としてトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成する方法について解説いたします。
ただの鉄クギ(Fe)から、”K₃[Fe(C₂O₄)₃]”という複雑な物質を合成しますので、多くの手順を踏みます。できるだけ分かりやすくまとめますので、しっかりと抑えてください。
また、収率は1.5 gの鉄クギからトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成したとすると、理論収量は13.2 gですので、実際に得られた収量を13.2 gで割って、100をかけることによって求めることが出来ます。具体的な計算式は以下の通りです。
トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウム収率計算式

1‐1、鉄クギを鉄(Ⅱ)イオンにする

まず、鉄クギ(Fe)を希硫酸によって、2価の鉄イオン(Fe²⁺)を生成させます。

反応式は以下のようになります。

 

Fe + H₂SO₄ → FeSO₄ + H₂

 

ここでは、過激に反応させると希硫酸が吹き上がる事故が起こるので、お気を付けください。

 

 

1‐2、鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに酸化する

先ほどの工程で得られた2価の鉄イオンを、濃硝酸によって3価の鉄イオンに酸化します。

具体的には、硫酸鉄(Ⅱ)に濃硫酸を加え、硫酸鉄(Ⅲ),硝酸鉄(Ⅲ),二酸化窒素,水を発生させます。

反応式は以下の通りです。

 

3FeSO₄ + 6HNO₃ → Fe(NO₃)₃ + Fe₂(SO₄)₃ + 3NO₂ + 3H₂O

 

 

1‐3、鉄(Ⅲ)イオンを水酸化鉄(Ⅲ)にする

先ほどの工程で得られた硫酸鉄(Ⅲ)及び硝酸鉄(Ⅲ)に、アンモニア水を加えて水酸化鉄(Ⅲ)を生成させます。

反応式は、それぞれ以下の通りです。

 

Fe₂(SO₄)₃ + 6NH₃ + 6H₂O → 2Fe(OH)₃ + 3(NH₄)₂SO₄

Fe(NO₃)₃ + 3NH₃ + 3H₂O → Fe(OH)₃ + 3NH₄NO₃

 

硫酸鉄(Ⅲ)とアンモニア水の反応式の係数を合わせるのには、大変苦戦しました。

未定係数法を使いましたが、それでも大変でした。興味のある方は、以下のリンクを参考に係数合わせをやってみてください(笑)。

【未定係数法】化学反応式の係数を決定する裏技のやり方を大公開!

 

 

1‐4、シュウ酸水素カリウムを生成する

ここでは、先ほどの工程とは異なり、水酸化鉄(Ⅲ)と反応させるためのシュウ酸水素カリウムを、シュウ酸と水酸化カリウムの反応によって生成させます。

反応式は以下の通りです。

 

H₂C₂O₄ + KOH → KHC₂O₄ + H₂O

 

ちなみに、テキストでは2.8 gのシュウ酸二水和物(126.07 g/mol)を、20(w/v)% 水酸化カリウム(56.11 g/mol)によって中和させています。

したがって以下の式から6.25 mLの20(w/v)% 水酸化カリウムが中和に必要であることが分かります。

シュウ酸水素カリウムを生成する

ちなみに水に対する溶解度は、シュウ酸が10.8 g/100 mL,シュウ酸水素カリウムが22.3 g/100 mL,シュウ酸カリウムが36.4 g/100 mLと中和されるほど水に溶けやすくなっています。

 

 

1‐5、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成する

いよいよ大詰めです。

1-3で生成した水酸化鉄(Ⅲ)と1-4で生成したシュウ酸水素カリウムを反応させて、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成します。

トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムは合成されたのちに、3水和物の形で結晶として析出します。

反応式は以下の通りです。

 

3KHC₂O₄ + Fe(OH)₃ → K₃[Fe(C₂O₄)₃] + 3H₂O

K₃[Fe(C₂O₄)₃] + 3H₂O → K₃[Fe(C₂O₄)₃] ・3H₂O

 

 

2、実験操作

実験操作

 

まず、沈殿の洗浄について解説します。

沈殿の洗浄は、多量の洗液で1度に洗うよりも、少量の洗液で複数回に分けて洗浄した方が効果的です。

理由としては、溶解度にあります。溶液の量が多すぎると沈殿の一部が溶解し、溶液となって、ろ液側に流出してしまいます。一方、少量の洗液で複数回に分けて洗浄する方は、微量に含まれる不純物のみを溶解させ取り除くことが出来ます。つまり、少量の洗液で複数回に分けて洗浄した方が、目的の沈殿を溶解させずに、不純物のみを溶解させやすいので効率的であるということです。

今回の実験では、「1‐3、鉄(Ⅲ)イオンを水酸化鉄(Ⅲ)にする」の章で副産物として発生した硫酸鉄(Ⅲ)と硝酸鉄(Ⅲ)を取り除く操作として使用されています。ちなみに、硫酸鉄(Ⅲ)の水に対する溶解度は103.3 g/100 mL,硝酸鉄(Ⅲ)の水に対する溶解度は200 g/100 mLと非常に水に溶けやすいです。

沈殿の洗浄については、「酸化還元滴定による鉱石中の鉄の定量」という記事でも紹介しているので、合わせて読んでみてください。

 

酸化還元滴定による鉱石中の鉄の定量

 

 

次に、傾斜法について解説いたします。

傾斜法とは、別名デカンテーションと呼ばれ、液体と沈殿の混合液体を、静置することで比重の大きい沈殿を下に沈め、液体のみを上澄みとして回収する分離方法です。大まかな分離に適していて、今回の実験では、「1‐3、鉄(Ⅲ)イオンを水酸化鉄(Ⅲ)にする」の章で生成させた沈殿物である水酸化鉄(Ⅲ)と、それ以外の溶液に分けるとに使用されています。

傾斜法は、通常のろ過に比べてろ過精度は良くないものの、簡単に分離操作を行うことができるという利点があります。沈殿物を、どの精度で、ろ過するかによって、ろ過方法を選択していきましょう。

傾斜法については、「重量法による鉱石中の硫黄の定量」という記事でも紹介しているので、合わせて読んでみてください。

 

重量法による鉱石中の硫黄の定量

 

 

3、青写真

青写真

 

この章では、合成したトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを使用して青写真を作成する方法について、ご紹介いたします。

一番初めに説明したように、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムは、光を吸収して以下のようにシュウ酸カリウムとシュウ酸鉄(Ⅱ)と二酸化炭素に分解される性質を持ちます。
2K₃[Fe(C₂O₄)₃] → 3K₂C₂O₄ + 2FeC₂O₄ + CO₂
ここで生成されたシュウ酸鉄(Ⅱ)(FeC₂O₄)は、ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(K₃[Fe(CN)₆])と反応して、ターンブル青(濃青色)の沈殿または可溶性のコロイドを生じる性質を持っています。
つまり、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウム溶液と、ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム溶液を混合した溶液を白い紙に塗り、その上に一部をくり抜いた黒い画用紙を重ねて光を当てることで、くり抜かれて白い紙に直接光が当たる部分は青く呈色し、くり抜かれていない黒い画用紙で覆われている部分は呈色をしません
その後、シュウ酸鉄(Ⅱ)(FeC₂O₄)が、ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(K₃[Fe(CN)₆])よりも多い場合は、以下の反応によって、不溶性のターンブル青の沈殿を生じます。
3FeC₂O₄ + 2K₃[Fe(CN)₆] → 3K₂C₂O₄ + Fe₃[Fe(CN)₆]₂
一方、シュウ酸鉄(Ⅱ)(FeC₂O₄)が、ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(K₃[Fe(CN)₆])よりも少ない場合は、以下の反応によって、可溶性のターンブル青のコロイド溶液を生じます。

FeC₂O₄ + K₃[Fe(CN)₆] → K₂C₂O₄ + KFe[Fe(CN)₆]

 

また、色調については、絵の具のイメージから、不溶性のターンブル青の方が濃く、可溶性のターンブル青の方が薄いことが予想されます。

 

 

4、~まとめ~

いかがでしたか?

今回は、鉄クギからトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムを合成し、合成したトリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムが光によって分解する性質を利用して青写真を作成する実験を、トリオクサラト鉄(Ⅲ)酸カリウム,実験操作,青写真という3つのキーワードから説明しました。どの章も重要なのでしっかりと抑えておきましょう。

 

また、参考文献は以下の通りになります。

1、荻野和子「学生実験教材としてのトリス(オキサラト)鉄(Ⅲ)錯体の合成とその青写真への応用」化学教育、1982、P、30,79,80

2、大槻勇「使い捨て懐炉を原料とした製造実験の教材化ートリス(オキサラト)鉄(Ⅲ)酸カリウムの合成」東レ科学振興会、1983、P、20~23

 

最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。

また、完全に情報を網羅しきれていないと思いますので、質問等ありましたら、下のコメント欄にコメントお願いします。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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