こんにちは、transです。
今回は、沈殿滴定を用いて水道水中の塩化物イオンを定量する実験について解説します。特に、ファヤンス法とモール法については詳しく解説します。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、はじめに
まず、沈殿滴定ですが、沈殿反応の量的関係を利用した滴定のことです。主に、陰イオンの定量に用いられます。今回も陰イオンである塩化物イオンの定量ですね。
今回の実験では既知の水道水中の塩化物イオン濃度と、沈殿滴定によって得られた値を比較すると思うので、参考として東京都の水道水中の塩化物イオンが記載されているサイトのリンクを下に貼っておきます。残留塩素濃度(mg/L)の値を文献値としてください。
2、ファヤンス法
エナジードリンクの画像です。ファヤンス法で使うフルオレセインは、こんな色です(笑)。
ファヤンス法とは、沈殿指示薬としてフルオレセイン(C20H12O5)を加えて、硝酸銀(AgNO3)水溶液を滴下することにより塩化物イオンを定量する沈殿滴定のことです。反応式は以下の通りです。
Cl– + AgNO3 → AgCl +NO3–
塩化物イオンが無くなるまでは上記の反応式からも分かるように、反応液中にあるイオンは、塩化物イオン(Cl–)と硝酸イオン(NO3–)のみです。つまり、陰イオンのみ存在しています。フルオレセインは弱酸で電離すると陰イオンになります(Fl–)。しかし、水溶液中には、陰イオンしかないので、何も反応が起きません。
しかし、塩化物イオンがなくなると、銀イオン(Ag+)あらわれ、これが塩化銀コロイドに吸着します。さらにフルオレセインが吸着して色を黄緑色から淡赤色に変色させます。イメージは下の図です。
また、塩化物イオンの濃度は以下の式で算出されます。
ここから算出した塩化物イオン濃度(mol/L)に塩化物イオンのモル質量35.5(g/mol)をかけて、さらに1000(mg/g)をかけてグラムをミリグラムに直すことで、文献値の単位であるmg/Lになるので比較することができます。
3、モール法
モール法とは、沈殿指示薬としてクロム酸カリウム(K2CrO4)を加えて、硝酸銀水溶液を滴下することにより塩化物イオンを定量する沈殿滴定のことです。反応式は以下の通りです。
Cl– + AgNO3 → AgCl +NO3–
ファヤンス法と同じであることが分かります。
塩化物イオンが存在している間は銀イオンは塩化銀として沈殿するため、存在しません。しかし、塩化物イオンがなくなると、銀イオンがクロム酸イオン(CrO42-)が反応して赤褐色沈殿を示します。反応式は以下の通りです。
CrO42- + 2Ag+ → Ag2CrO4
鋭い人は、どこかで見た反応式だと思ったはずです。モール法は、別の記事で書いた陰イオン定性分析の応用だということが分かるはずです。気になった人は合わせて、こちらもご覧ください。先に、銀イオンと塩化物イオンが反応するのは、反応性の違いや溶解度の差だと思われます。
また、塩化物イオンの濃度算出はファヤンス法に書いたものと同じなので、こちらでの記載は省略します。必要な人は、ファヤンス法の章を参照してください。
4、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、沈殿滴定によって水道水中の塩化物イオン濃度を算出する実験について解説しました。特に、ファヤンス法とモール法については各章ごとに詳しく説明しました。今回は内容が難しく、全て重要な内容であったので、箇条書きのまとめは、ありません。
また、参考文献は以下の通りになります。一応、参考文献は載せましたが、自分の知識で書いてしまった部分が多いので、この文献だけではここまで書けないと思います。なので、図書館に行って本が借りられるようになったら、参考文献を追加しておきます。
1、飯田隆,菅原正雄,鈴鹿敢,辻智也,宮入伸一「イラストで見る化学実験の基礎知識 第3版」2014、p 91,92
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。