こんちにちは、transです。
今回は、薄層クロマトグラフィーを用いてホウレンソウの色素を分離する実験について紹介します。
まず、薄層クロマトグラフィーの章で、クロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーの基本的知識や原理について紹介します。
次に、ホウレンソウの色素成分の章で、ホウレンソウに含まれる色素成分の構造式,色,化学的特徴について紹介します。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、薄層クロマトグラフィー
クロマトグラフィーとは、液体に溶けた物質がシリカゲルや、ろ紙,カラムを移動するときの、物質による吸着力の違いにより生じる移動速度の差を利用して物質を分離する操作のことです。
クロマトグラフィーは、吸着させる物質によって名前が変わる。例えば、薄層のアルミ板の表面にシリカゲルを塗ったものを使う時は薄層クロマトグラフィー(TLC)といい、ろ紙を用いた場合はペーパークロマトグラフィーといい、ガラス管に吸着物質を詰めて上から下に溶液を流した場合はカラムクロマトグラフィーといいます。
ホウレンソウの色素成分を分離する今回の実験では、薄層クロマトグラフィーを利用します。
薄層クロマトグラフィーは、以下の図のようにTLCプレートに毛細管でスポットした後に、展開溶媒の入った展開槽に入れる(展開する)ことで分離することができます。
このときに展開する前に、展開槽内を展開溶媒で飽和する必要があります。理由としては、展開槽内を展開溶媒で飽和するとTLCプレートを入れた瞬間に、TLCプレート全体に展開溶媒が前吸着します。これにより、展開溶媒がTLCプレートを移動する時間を短縮することができます。また、移動が止まったスポットの固定を強くすることができます。
さらに、展開溶媒は、単一溶媒ではなく混合溶液を用います。試料には多くの極性の異なる成分が含まれています。つまり、展開溶媒を単一にしてしまうと溶けない成分が出てきてしまいます。しかし、極性の異なる溶媒を混ぜることによって単一溶媒では溶けていない成分も溶かすことができます。
2、ホウレンソウの色素成分
この章では、薄層クロマトグラフィーによって得られる色素成分の構造式,色,化学的性質について紹介します。
名前,色,化学的性質,構造式のリンクの順で紹介します。構造式は、複雑なため既知のサイトリンクを貼っておきます。
・クロロフィルa,青緑,光を吸収して励起電子を放出する,構造式
・クロロフィルb,黄緑,捕捉した光エネルギーを効率的にクロロフィルaに伝達する,構造式
・フェオフィチサンチンa,黒,クロロフィルaからMgが水素2つと置き換わったもの,構造式
・フェオフィチサンチンb,黄土,クロロフィルbからMgが水素2つと置き換わったもの,構造式
・βカロテン,赤紫,ビタミンAの前駆体,構造式
・ルテイン,赤橙,酸化防止剤,構造式
・ビオラキサンチン,橙,着色料に利用,構造式
・ネオキサンチン,黄,植物ホルモンアブシジン酸の中間体,構造式(trans型),構造式(cis型)
TLCプレートはシリカゲルを表面に塗っていて、シリカゲルはヒドロキシ基(ーOH)をもつので極性が強いです。つまり、薄層クロマトグラフィーは、極性が高い物質ほど低く、極性が低い物質ほど高い位置にスポットとして表れます。
今回の物質では、
βカロテン,フェオフィチサンチンa,フェオフィチサンチンb,クロロフィルa,クロロフィルb,ルテイン,ビオラキサンチン,ネオキサンチン
という順番で表れることが予想されます(βカロテンほど高く,ネオキサンチンほど低い)。
また、このような移動距離をRf値(試料成分の移動距離/溶媒先端の移動距離)というもので薄層クロマトグラフィーは評価します。Rf値が大きいほど極性が低く、Rf値が小さいほど極性が高いです。
3、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、ホウレンソウの色素成分を薄層クロマトグラフィーによって分離する実験について説明しました。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、戸嶋直樹,瀬川浩司「理解しやすい化学」文英堂、2012、p 20
2、飯田隆,菅原正雄,鈴鹿敢,辻智也,宮入伸一「イラストで見る化学実験の基礎知識 第3版」2014、p 196~200
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。