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有機化合物官能基の誘導体の検出および確認試験

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有機化合物官能基の誘導体の検出および確認試験

 

こんにちは、trans(トランス)です。

今回は、有機化合物が持つ特定の官能基と特異的に反応し、生成される誘導体の検出や、各官能基の確認試験について解説いたします。

 

まず、誘導体の章では、アルデヒドやケトンの求核付加反応を利用した誘導体の検出や、カフェイン・サリチル酸塩誘導体について説明いたします。

次に、シッフ試験の章では、検出原理や反応について解説いたします。

次に、ヨードホルム反応の章では、検出原理や具体的な利用方法ついて解説いたします。

最後に、フェーリング試験の章では、検出原理について解説いたします。

 

実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて、予習の手間が省けるように、この記事を書いています。スマホを見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。

レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことに興味があれば、読んでみてください。

 

それでは行きましょう!

 

 

1、誘導体

誘導体

 

誘導体と画像検索したら、なぜかレモンの写真が出てきたので、載せてみました。

ということで、まず、アルデヒドやケトンの求核付加反応を利用した誘導体の検出について解説いたします。

 

アルデヒドやケトンのようにC=Oを持つ有機化合物をカルボニル化合物といい、このカルボニル基にアミノ基が求核付加反応をすることによってイミン誘導体を得ることができます

 

イミン誘導体については、過去に「シクロヘキサノールからシクロヘキサノンの合成及びイミン誘導体の合成」という記事で詳しく書いていますので、興味のある方は、そちらも合わせてご覧ください。

 

シクロヘキサノールからシクロヘキサノンの合成及びイミン誘導体の合成

 

今回はカルボニル化合物のイミン誘導体の例として、塩酸セミカルバジドからセミカルバゾンを合成する反応と、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンから2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンを合成する反応を示します。

 

セミカルバゾン

 

 

2,4,-ジニトロフェニルヒドラゾン

 

 

次に、塩基性のカフェインが酸と反応して塩を形成することを利用したカフェイン・サリチル酸塩誘導体について、解説いたします。

反応式は、以下の通りです。

 

C₈H₁₀N₄O₂ + C₆H₄(OH)COOH → C₈H₁₀N₄O₂・C₆H₄(OH)COOH

 

「いや、分からんて」と思いましたね。

安心してください、以下に構造式で示した反応式を示します。

 

カフェイン・サリチル酸塩誘導体

 

上記のように、カフェインの窒素が持つ非共有電子対に、極性を持ったカルボキシル基の水素が結合する形で誘導体を形成します。

 

 

2、シッフ試験

シッフ試験

 

シッフ試験とは、シッフ試薬(水98 %以上,塩酸1 %以下,メタ重亜硫酸ナトリウム1 %以下,塩基性フクシン塩酸塩1 %以下)を用いるアルデヒドの検出試験のことです。

 

この章では、どのようにアルデヒドと反応して呈色するかを解説していきます。

 

まず、亜硫酸水素塩と塩基性フクシン塩酸塩が反応することで、スルホン化された無色の化合物が形成されます。

もし、アルデヒド基が存在した場合、無色の化合物のアミン基が持つ非共有電子対がアルデヒド基へ求核付加反応を起こします。

その結果、マゼンタ色に呈色をします。

 

反応の流れを纏めようと思ったのですが、複雑でしたので、以下のサイトの画像を参考にしてみてください。

 

シッフ試験 メカニズム

引用:Schiff Test ― Checking for Aldehydes with Schiff Reagent

 

 

3、ヨードホルム反応

ヨードホルム反応

 

ヨードホルム反応とは、「CH₃CO-R」または「CH₃CH(OH)-R」という有機化合物が特異的に塩基性水溶液でヨウ素と反応してヨードホルム(黄色沈殿)を生じる反応のことです。

 

「CH₃CO-R」の例として、アセトンCH₃COCH₃のヨードホルム反応の反応式を以下に示します。

 

CH₃COCH₃ + 3I₂ + 4NaOH → CHI₃↓ + CH₃COONa + 3NaI + 3H₂O

 

 

また、「CH₃CH(OH)-R」の例として、エタノールCH₃CH₂OHのヨードホルム反応の反応式を以下に示します。

 

CH₃CH₂OH + 4I₂ + 6NaOH → CHI₃↓ + HCOONa + 5NaI + 5H₂O

 

 

このヨードホルム反応は、構造式の推定に利用されます。

例えば、組成式がC₅H₈Oと分かっており、ヨードホルム反応が陽性で、過マンガン酸カリウムと反応しない化合物の推定などに利用されます。

 

まず、ヨードホルム反応が陽性ですので、構造式は「CH₃CO-R」または「CH₃CH(OH)-R」になります。

しかし、「CH₃CH(OH)-R」となる場合は、残りで使用できる元素がC₃H₃となるため、どのように考えても三重結合を作る形となってしまいます。これでは、過マンガン酸カリウムと反応してしまうので、「CH₃CH(OH)-R」は有り得ないということになります。

 

次に、「CH₃CH(OH)-R」となる場合を考えると、残りで使用できる元素がC₃H₅となります。この元素を使用して、多重結合を含まない形を考えると、環状構造となり、上記の条件から推測できる化合物はシクロプロピルメチルケトンということになります。

 

 

4、フェーリング試験

フェーリング試験

 

フェーリング試験とは、アルデヒドや還元糖の検出に用いられる試験で、これらの還元性物質にフェーリング液を加えて加熱すると酸化銅(Ⅰ) Cu₂Oの赤色沈殿が生じます

 

アルデヒドはイメージが付きやすいと思いますが、還元糖はイメージが難しいと思いますので、簡単に還元糖の説明を致します。

 

還元糖とは、塩基性溶液中でアルデヒド基やケト基を形成する糖のことです。

もう少し噛み砕いていうと、グルコースやフルクトースのような全ての単糖は鎖状構造のときにアルデヒド基かケト基を持つので、還元糖になります。

 

また、ラクトースやマルトースなどの二糖も、脱水縮合部(-O-)から隣接しない箇所に別の酸素原子を持っているので、鎖状構造となったときに、アルデヒド基かケト基を持つので、還元糖になります。

ただし、スクロースのような脱水縮合部(-O-)から隣接しない箇所に別の酸素原子を持たない二糖は還元糖ではありません。

 

つまり、スクロースに対して、フェーリング試験を行うと陰性となります。

ただし、スクロースを加水分解すると、グルコースとフルクトースに分かれますので、これに対してフェーリング試験を行うと陽性となります。

 

 

5、~まとめ~

いかがでしたか?

今回は、有機化合物が持つ特定の官能基と特異的に反応し、生成される誘導体の検出や、各官能基を確認する実験について、誘導体,シッフ試験,ヨードホルム反応,フェーリング試験という4つのキーワードから説明しました。どの章も重要なのでしっかりと抑えておきましょう。

 

また、参考文献は以下の通りになります。

1、「化学大辞典」東京化学同人,p 1971

 

最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。

 

また、完全に情報を網羅しきれていないと思いますので、質問等ありましたら、下のコメント欄にコメントお願いします。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

-理系の教養

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  1. […] ヨードホルム反応については、「有機化合物官能基の誘導体の検出および確認試験」という記事で詳しく書いていますので、興味のある方は、そちらも併せてご確認ください。 […]

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研究者で、思想家で、ゴルフ愛好家の三刀流社会人です。高校時代に野球でイップスになり絶望しましたが、ゴルフに出会いました。今は、研究の合間に、ブログとゴルフをやっています。効率の良い豊かな人生を目指しています。化学・自己啓発・ゴルフについて呟きます。

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