こんにちは、transです。
今回は、金属メッキの実験について紹介します。特に、銅に亜鉛をメッキして加熱することによって合金である黄銅(しんちゅう)にする実験について紹介します。
まず、イオン化傾向の章では、メッキの基礎知識となるイオン化傾向についてと、イオン化傾向を用いた応用例をいくつか紹介します。
また、金属メッキ・合金の章では、金属メッキや合金の種類、銅に亜鉛をメッキして加熱することによって合金である黄銅(しんちゅう)にする実験の解説などしていきます。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、イオン化傾向
イオン化傾向とは、水溶液中での金属の陽イオンのなりやすさ(酸化されやすさ)を表した系列です。系列は以下のようになっています。
Li,K,Ca,Na,Mg,Al,Zn,Fe,Ni,Sn,Pb,(H₂),Cu,Hg,Ag,Pt,Au
Li に近付くほど、陽イオンになりやすく(酸化されやすく)、Au に近付くほど、陽イオンになりにくい(酸化されにくい)です。
このようなイオン化傾向の差を利用したものとして、メッキや電池というものがあります。メッキに関しては、次の章で記載するので、この章では電池について紹介します。
さて、電池ですが、電池とは、酸化還元反応で発生する化学エネルギーを電気エネルギーとして取り出す装置のことです。電力は、酸化還元反応で得られる化学エネルギーが大きいほど大きくなります。この酸化還元反応で得られる化学エネルギーは、標準電極電位(酸化還元電位)の金属の電位差によって得ることができます。参考に標準電極電位の表が載っているサイトのリンクを貼っておきます。
上記のリンクの表の値を用いて、銅と亜鉛を見てみると、銅が0.340 V,亜鉛が-0.763 V であることが分かります。つまり、電位差は、0.340-(-0.763)=1.103 V となります。
つまり、銅と亜鉛で電池を作ったら、1.103 V の起電力の電池を作ることができることになります。
また、電池ですがボルタ電池,ダニエル電池,鉛蓄電池,燃料電池,マンガン電池,ニッケル-水素電池,リチウム二次電池など様々な物があります。今回は、原理が簡単なボルタ電池とダニエル電池について紹介します。
まず、ボルタ電池です。ボルタ電池は、最初に発明された電池であります。
電池式は、 ⊖Zn|H₂SO₄ aq |Cu⊕ で表します。
負極は、 Zn → Zn2+ +2e-
正極は、 2H+ + 2e- → H₂
という反応が起きています。
しかし、正極である銅板の表面に水素が付着して、すぐに起電力が下がる分極という問題が起きてしまいました。
この分極してしまう問題を解決したのが、ダニエル電池です。
電池式は、 ⊖Zn|ZnSO₄ aq |CuSO₄ aq|Cu⊕ で表します。
負極は、 Zn → Zn2+ +2e-
正極は、 Cu2+ + 2e- → Cu
という反応が起きています。
正極と負極の間をセロハンのようなイオンだけが通過できる大きさの膜で仕切ることで、負極にはSO42-を絶えず供給し、正極にはCu2+を絶えず供給することができるようになりました。これによって、銅の表面には銅が増えるだけなので分極するという問題が解決しました。
2、金属メッキ・合金
金属メッキとは、イオン化傾向の差を利用して金属表面に別の金属をコーティングして特定の金属の腐食を遅らせる手法です。
例えば、トタンです。トタンは鉄に亜鉛をメッキしたものです。鉄は、さびやすいですが、メッキによって酸化を抑えさびにくくできます。さらに、表面に傷が付いたとしてもイオン化傾向が高い亜鉛が先にイオンになり鉄のイオン化を抑える役割があります。
金属メッキは、トタン(亜鉛メッキ),ブリキ(スズメッキ),水道栓などに用いられるクロムメッキ,時計などに用いられる金メッキなどがあります。
また、メッキとは逆に表面を腐食させるエッチングという手法もあります。銅に亜鉛をメッキして加熱することによって合金である黄銅(しんちゅう)にする実験では、銅板に模様を付けるためにエッチングという技術を使いました。
今回の実験のエッチングは、三価の鉄が二価の鉄に還元するときに、銅を銅イオンに酸化させて表面から溶かすということをします。反応式は以下の通りです。
2FeCl₃ +Cu → 2FeCl₃ + CuCl₂
最後に合金についてです。合金とは、2種類以上の金属を融かし合わせることによって、1種類の金属にはない実用性が高い機能を持った物質のことです。
例えば、今回の実験で得る黄銅は、銅と亜鉛の合金で、見た目が金のように美しく、加工しやすいといった利点があります。
他にも、腐食しにくく、加工しやすい青銅(銅とスズの合金)や白銅(銅とニッケルの合金),流し台などに使われるステンレス(鉄とクロムとニッケルの合金),軽量で強度の大きいジュラルミン(アルミニウムと銅とマンガンとマグネシウムの合金),金属接合に用いられるはんだ(鉛とスズの合金)などがあります。
3、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、銅に亜鉛をメッキして加熱することによって合金である黄銅(しんちゅう)にする実験、特にイオン化傾向,応用例として電池,メッキ,合金,エッチングについて解説しました。
最初はただの銅板が、亜鉛にメッキされて銀のようになり、加熱されると黄銅になり金のような見た目になるので、個人的にこの実験は好きです。銅→銀→金 というような錬金術を、ほうふつとさせる実験を、ぜひ体験してみてください。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、戸嶋直樹,瀬川浩司「理解しやすい化学」文英堂、2012、p 143~155,353~355
2、辰巳敬(他13名)「化学」数研出版、2012、p 116~123,240
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。