こんにちは、transです。
今回は、陰イオン定性分析において大切な、陰イオンの名称と色,分液漏斗、の2つのキーワードについて解説していきます。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて予習の手間が省けるようにこの記事を書いています。スマホで見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことが知りたければ読んでいただいて構いません。
それでは行きましょう!
1、陰イオンの名称と色
ここでは、主な陰イオンの名称と水溶液の色、さらに得られる沈殿の反応式について記載していきます。
<第一属陰イオン>
①硫酸イオン(無色)
・SO42- + Ba2+ → BaSO4(白色沈殿)
・SO42- + Pb2+ → PbSO4(白色沈殿)
<第二属陰イオン>
①クロム酸イオン(黄色)
・CrO42- + Ba2+ → BaCrO4(黄色沈殿)
・CrO42- + 2Ag+ → Ag2CrO4(褐赤色沈殿)
・CrO42- + Pb2+ → PbCrO4(黄色沈殿)
②二クロム酸イオン(橙黄色)
・Cr2O72- + 2Ag+ → Ag2Cr2O7(赤褐色沈殿)
<第三属陰イオン>
①ヒ酸イオン(無色)
・2AsO43– + 3Ba2+ → Ba3(AsO4)2(白色沈殿)
・AsO43– + 3Ag+ → Ag3AsO4(チョコレート色沈殿)
・AsO43– + Mg2+ + NH4+ + 6H2O → MgNH4AsO4・6H2O (白色沈殿)
・H2AsO4– + 12MoO42- + 3NH4+ + 22H+ → (NH4)3AsO4・ 12MoO3 (黄色沈殿)+ 12H2O
②酒石酸イオン(無色)
・C4H4O62- + Ba2+ → BaC4H4O6(白色沈殿)
・C4H4O62- + 2Ag+ → Ag2C4H4O6(白色沈殿)
<第四属陰イオン>
①ヨウ化物イオン(無色)
・I– + Ag+ → AgI(黄色沈殿)
※ヨウ素は極性分子に溶けやすく、四塩化炭素(CCl4)に溶けると赤紫色を呈色します(沈殿ではありませんが重要な反応なので書いておきました)。
②臭化物イオン(赤褐色)
・Br– + Ag+ → AgBr(淡黄色沈殿)
※臭素は極性分子に溶けやすく、四塩化炭素(CCl4)に溶けると橙黄色や黄色を呈色します(沈殿ではありませんが重要な反応なので書いておきました)。
③ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン(黄色)
・[Fe(CN)6]4- + 4Ag+ → Ag4[Fe(CN)6](白色沈殿)
・3[Fe(CN)6]4- + 4Fe3+ → Fe4[Fe(CN)6]3(青色沈殿)
・[Fe(CN)6]4- + 2Fe2+ → Fe2[Fe(CN)6](青白色沈殿)
・[Fe(CN)6]4- + 2Cu2+ → Cu2[Fe(CN)6](あずき色沈殿)
④ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸イオン(黄褐色)
・[Fe(CN)6]3- + 3Ag+ → Ag3[Fe(CN)6](橙色沈殿)
・[Fe(CN)6]3- + Fe3+ → Fe[Fe(CN)6](褐色沈殿)
・2[Fe(CN)6]3- + 3Fe2+ → Fe3[Fe(CN)6]2(青色沈殿)
・2[Fe(CN)6]3- + 3Cu2+ → Cu3[Fe(CN)6]2(緑褐色沈殿)
<第五属陰イオン>
①酢酸イオン(無色)
②硝酸イオン(無色)
2、分液漏斗
分液漏斗とは、相溶性のない2つの液体に対して溶液が分配する割合の差を利用して分離をするときに使う漏斗です。
次に分液漏斗の使い方について説明します。
上に示した図が分液漏斗を模式的に示したものです。
今回は、最も一般的な水(極性溶媒)と有機溶媒(非極性溶媒)について説明します。
①まず、コックを閉じて、活栓を開けて水と有機溶媒を入れてください。
②活栓を閉めた後、空気穴と溝をずらしてください(活栓部分にありますが実際に器具を見れば分かると思います)。
③逆(逆さま)にして、コックを開け有機溶媒のガスを抜きます。
④コックを閉じて、逆さまのまま振ります。
⑤先ほど説明した③と④を2~3回繰り返します。
⑥元に戻して、空気穴と溝を合わせてコックを開け、下層(今回は水)のみを取り除きます。これで分液漏斗に残ったのが有機溶媒になります。これで欲しい溶液のみを得ることができます。
以上が分液漏斗の使い方です。
次に、実際に陰イオン定性分析との関係性について説明します。
先ほどの章の「陰イオンの名称と色」で説明したヨウ素,臭素と四塩化炭素を反応させるときに使います。ろ液は極性物質、四塩化炭素は非極性物質なので、ろ液にあるヨウ素と臭素を四塩化炭素に移すことができます。その後の、ろ液と四塩化炭素を分離させる過程で使います。
また、分液漏斗は有機化学実験でもよく使われるのでしっかり抑えておきましょう。
3、まとめ
いかがでしたか?
今回は、陰イオン定性分析のキーワードとして、陰イオンの名称と色,分液漏斗について説明しました。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、増田達男,肆矢浩一,中込真,米山裕「フォトサイエンス化学図録」2012、p 9,156,157
2、飯田隆,菅原正雄,鈴鹿敢,辻智也,宮入伸一「イラストで見る化学実験の基礎知識 第3版」2014、p 168
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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