
こんにちは、trans(トランス)です。
今回は、ニワトリ卵白リゾチームを用いて、タンパク質を結晶化する実験について解説いたします。
まず、リゾチームの章では、ニワトリ卵白リゾチーム(以下:リゾチーム)とは、どのようなタンパク質であるかについて説明いたします。
次に、タンパク質結晶化の章では、タンパク質の結晶化に用いられる一般的な手法について解説いたします。
最後に、タンパク質高次構造解析の章では、タンパク質の高次構造解析に用いられる手法にについて解説いたします。
実験の予習をやらなければいけないけど時間が無いという学生に向けて、予習の手間が省けるように、この記事を書いています。スマホを見ながら電車で予習することもできます。実験項目は某大学の実験テキストを参考にしています。
レベル的には、大学の学部生レベルを想定していますが、高校生も化学の発展的なことに興味があれば、読んでみてください。
それでは行きましょう!
目次
1、リゾチーム

リゾチームとは、細菌の細胞壁を分解する酵素であり、細胞壁を構成するペプチドグリカン中のN-アセチルムラミン酸(NAM/MurNAc)(参考:N-アセチルムラミン酸 – Wikipedia)とN-アセチルグルコサミン(NAG/GlcNAc)(参考:N-アセチルグルコサミン – Wikipedia)の間に存在するグリコシド結合を切断する働きを持っています。
この作用によって細菌が溶解するように見えることから、「溶菌酵素」とも呼ばれています。
リゾチームは脊椎動物の細胞や分泌液に広く分布しており、人では涙,鼻汁,母乳などに多く含まれ、自然免疫の一端を担っています。
本実験では、リゾチームの中でも特に研究が進んでおり、作用機構が詳細に解明されているニワトリ卵白由来のリゾチーム(HEWリゾチーム)を使用しています。
この酵素は129個のアミノ酸残基からなる単鎖ポリペプチドで、内部には4つのジスルフィド結合を有する安定した構造を特徴としています。
2、タンパク質結晶化

この章では、タンパク質結晶化において広く利用されている5種類の代表的な手法についてご説明いたします。
2-1、蒸気拡散法
蒸気拡散法には、シッティングドロップ法とハンギングドロップ法の2種類があります。これらの方法は、タンパク質溶液と結晶化溶液を混合したドロップ(結晶化ドロップ)と、結晶化溶液の原液との間に生じる濃度勾配を利用し、ドロップ内の溶液が徐々に濃縮される過程で結晶を析出させる手法です。
シッティングドロップ法では、気相がドロップの上部に接触するため、濃度の高くなった溶液が下方へ移動しやすく、対流が生じやすいという特徴があります。
その結果、ドロップ内の濃度変化が比較的均一に進む一方で、内部に濃度勾配が形成されにくい点が挙げられます。
一方、ハンギングドロップ法では、ドロップが上部に配置されるため気相との接触面が下側となり、対流が起こりにくいという特徴があります。ただし、重力の影響により上下方向の濃度勾配が形成されにくい欠点があります(下図参照)。
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本実験では、この蒸気拡散法のうちハンギングドロップ法を用いて結晶化を行っています。また、結晶化溶液には塩化ナトリウムを含む沈殿溶液を使用しています。
2-2、バッチ法
バッチ法とは、タンパク質溶液と結晶化溶液を混合し、その混合液を完全に密封した状態で結晶化を進める方法です。
密閉環境下では対流が生じにくいため、結晶化には比較的長い時間を要します。
2-3、透析法
透析法とは、透析膜を介してタンパク質溶液を徐々に結晶化溶液へと置換していく過程で結晶を析出させる手法です。
環境変化が緩やかであるため、タンパク質への負荷が小さいという利点があります。
ただし、微量サンプルには適用しにくい点が欠点として挙げられます。
2-4、カウンターディフュージョン法
カウンターディフュージョン法とは、細いチューブ内にタンパク質溶液を吸引し、その端にゲルやシリコンを装着して結晶化溶液と接触させる方法です。
チューブ内で両溶液が拡散しながら混合されるため、接触面積が小さく、自然な濃度勾配が形成されます。この緩やかな濃度変化により、結晶が生成しやすい環境が整います。
2-5、脂質メソフェーズ法
脂質メソフェーズ法とは、脂質二重層中に膜タンパク質を再構成し、その三次元的な配向を利用して結晶化を行う方法です。
特に膜タンパク質の結晶化に適した手法として知られております。
3、タンパク質高次構造解析

本実験ではタンパク質の高次構造解析自体は実施しておりません。しかし、一般的にタンパク質の結晶化は、X 線結晶構造解析を行うための準備段階として重要な工程です。
そのため、今回は代表的な高次構造解析法についてご紹介し、あわせて結晶化との関連についても述べさせていただきます。
3-1、X線結晶構造解析法
X線結晶構造解析法とは、目的とする分子の結晶に X 線を照射し、結晶中の規則的な原子配列によって生じる回折パターンを検出することで、分子の立体構造を直接決定する手法です。
得られた回折像を解析することにより、原子レベルの精密な構造情報を取得することが可能であり、現在最も広く利用されている解析法の一つとなっています。
3-2、核磁気共鳴(NMR)分光法
核磁気共鳴(NMR)分光法は、外部磁場中で原子核が共鳴する現象を利用し、プロトンなどの核スピンのシグナルの違いや相関性を解析することで構造を決定する手法です。
最大の特徴は、試料が結晶である必要がなく、溶液状態のタンパク質でも解析が可能である点です。
そのため、結晶化が困難なタンパク質に対しても有効なアプローチとなります。
以上のように、タンパク質の高次構造解析には主に X 線結晶構造解析法と NMR 分光法の 2 種類が用いられています。
このうち X 線結晶構造解析法では結晶化が不可欠であるため、タンパク質の結晶化は構造解析に向けた重要な準備工程として位置づけられています。
一方で、NMR のように結晶化を必要としない手法も存在するので、解析の目的や試料の性質に応じて適切な方法が選択されます。
4、~まとめ~
いかがでしたか?
今回は、ニワトリ卵白リゾチームを用いて、タンパク質を結晶化する実験について、リゾチーム,タンパク質結晶化,タンパク質高次構造解析という3つのキーワードから説明しました。どの章も重要なのでしっかりと抑えておきましょう。
また、参考文献は以下の通りになります。
1、佐藤衛:タンパク質のX線解析、共立出版(1998)
最後になりますが、参考文献以外はコピペ厳禁です。バレます。気を付けてください。自分で理解してまとめてください。
また、完全に情報を網羅しきれていないと思いますので、質問等ありましたら、下のコメント欄にコメントお願いします。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
